「どんな心理が見えてくる?」

 

「心理学と経済学の接点」

あなたが今体験した簡単なゲーム、これは囚人のジレンマゲームと呼ばれています。経済学で開発されたゲームですが、心理学でも1950年代から大量の実験研究が行われてきました。その大量の実験から見えてきたのは「人間は、自分の利益だけを追求することはない」ということです。

「自己利益追求以外に何があるんだろう?」

「人間は自分の利益だけを追求するわけではない」、一見、このことは実験して調べなくてもわかるような当たり前のことかもしれません。では、人間は自己利益追求以外にどのような心理を働かせて「相手に渡す」という行動をとるのでしょうか。「自分はどうなってもいいから、相手の利益が増えればいい」という自己犠牲・利他的な精神でしょうか。

「相手に裏切られるのはやっぱり嫌」

例えば、あなたが体験したゲームに順番をつけてみましょう。相手が先にあなたに1000円を渡すか渡さないかを決定します。その決定を見て、あなたが1000円を渡すか渡さないかを決定します。さあ、相手が1000円を「渡さない」と決定しました。あなたは相手に1000円を渡しますか?実際に実験をしてみると「渡さない」と決定した相手には80%から90%の人が自分も「渡さない」と決定します。これは「自分だけ損をして相手に得をさせることは望まない」という心理が働いている可能性を示しています。一方、相手が「渡す」と決定した場合には次の人のほとんども「渡す」と決定します。これは「相手が良い行いをしてきたのだからそれに報いたい」という心理が働いている可能性を示しています。つまり、私たちが持っている利他性の背後にあるのは「自分がどんなに犠牲になっても相手を助けたい」という心理ではなく、「損も得も、お互い様」で端的に表現される心理である可能性が高いのです。

「社会科学における心理学の役割」

ここで紹介した実験例はあくまで氷山の一角であり、ジレンマ状況における人間の心理を解き明かそうとする研究は近年でも盛んになされています。特に「そもそもなぜ人間は他の人を助ける行動をするのか」という問、つまり人間の利他性の進化的起源に関する問は生物学者も巻き込んで盛んに議論されています。上記で紹介した「お互い様」の心理の進化的な起源は何なのでしょうか。あるいは「お互い様」では説明出来ない利他性の背後にはどんな心理が潜んでいるのでしょうか。そうした心理を私たちは進化の過程でどのように身に着けてきたのでしょうか。他人を助けることは当たり前だと思うかもしれませんが、その「当たり前」な現象が実は非常に深く、重要な問を発しているのです。

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